着物って全部同じように見えて、種類が多くあり、また「格」なんて言葉も出てきて、難しいですよね…。
着物の種類によって着ていける場所と着ていけない場所があったり、着る季節に決まりがあったり…。
着物には大きく分けて2つの種類があります。
①着物の「格」における13種類
②着物の「季節」における3種類
着物の種類や季節について一覧表でまとめましたので、ぜひご活用ください!
1.着物の「格」における種類
着物の「格」とは
着物には、着物から小物まですべてに「格」というものがあります。
この「格」というのは着物の中における「地位」のようなものです。
「格」という言い方をすると難しそうと思うかもしれませんが、洋服と同じでTPOに合わせて使い分けるということです。
例えば洋服の中で格が高い服といえば、パーティードレスですよね。
逆に、格が低い服といえばTシャツワンピースでしょうか。
では、お呼ばれした結婚式などフォーマルな場所にTシャツワンピースで行けるでしょうか?
スーパーへの買い物にパーティードレスで行けるでしょうか?
行けなくはないですが、確実に“浮き”ますよね。
着物も同じことです。
黒留袖は洋服でいうところのパーティードレス、浴衣は洋服でいうところのTシャツワンピース。
着物も洋服同様、着るときに気を付けたいことは「格」を意識して、周りから浮かないように合わせるということです。
ただ、着物はなじみがないからちょっと難しく感じますよね。
そこで次の項目から着物の格や着ていける場所について解説していますので、参考にしてください。
着物の種類と格の一覧
格 | 礼装の格 | 着物の種類 | 概要 |
高 低 | 第一礼装 | 打掛 うちかけ | 白無垢は結婚式のみで着用できる最高格の着物。色打掛は披露宴でも着ることができる。 |
黒紋付 くろもんつき | ハレの日に着る最高格の着物。喪服として着る場合は黒の帯と合わせる。 | ||
黒留袖 くろとめそで | 既婚女性が着る最高格の着物。結婚式や披露宴で、仲人夫人や新新婦の母親、既婚の姉妹など新郎新婦に近い関係者が着る。 | ||
色留袖 いろとめそで | 既婚・未婚問わず着用できる格の高い着物。下半身のみ模様が入っている。 | ||
振袖 ふりそで | 未婚女性の第一礼装。帯の結び方にルールはなく、小物も華やかに刺繍の半衿や総絞りの帯揚げなどを合わせる。 | ||
準礼装 | 訪問着 ほうもんぎ | 振袖、留袖の次に格が高い着物。上半身にも柄が入っていて、広げると1枚の絵画のようになる華やかな着物。 | |
色無地 いろむじ | 白生地を黒以外の一色で染めた着物。柄はついていない。 | ||
付け下げ つけさげ | 訪問着より格が低く、小紋より格が高い。訪問着よりも模様付けが控えめな着物。 | ||
カジュアル | 江戸小紋 えどこもん | 遠目には無地に見える極小模様の着物。格の高い柄で紋を付けて礼装用の帯を合わせれば準礼装となる。 | |
小紋 こもん | 反物全体に繰り返し模様を型染めした着物。模様の大小は関係ない。 | ||
紬 つむぎ | 絹織物のひとつ。趣味性の高い着物で変わり結びや気軽な半幅帯にしてもOK。 | ||
御召 おめし | ちりめんと同じく緯糸に強い撚りをかけて織るため、独特の風合いがあるのが特徴。紬より薄く、織りの着物の中では最高級。 | ||
浴衣 ゆかた | もともとは湯上りなどに着るくつろぎ着だった。現在では夏の遊び着として欠かせない装い。 |
着物の着用シーン一覧
着物は格によって着用できるシーンが変わってきます。
格が高い色留袖はカジュアルな会食などには向かず、カジュアルな紬はフォーマルな結婚式には向きません。
結婚式 | 披露宴 パーティー | 入学式 卒業式 | 七五三 お宮参り | 観劇 会食 | お稽古 食事会 | 街着 | |
黒留袖 | 〇 | 〇 | × | × | × | × | × |
色留袖 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × | × |
振袖 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × | × |
訪問着 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | × | × |
色無地 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
付け下げ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
江戸小紋 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
小紋 | × | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
紬 | × | △ | × | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
御召 | × | △ | × | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
浴衣 | × | × | × | × | × | 〇 | 〇 |
着物の「格」における種類の詳細
打掛 【うちかけ】
結婚式などで花嫁が着る花嫁衣裳です。
白無垢は結婚式のみで着ることができる最高格の着物で、白一色で仕立てられており、綿帽子や角隠しと合わせます。
色打掛は披露宴でも着ることができ、鮮やかな色と華やかな模様が特徴で、綿帽子は合わせられず、角隠しを合わせます。
白無垢
色打掛
綿帽子
角隠し
黒紋付 【くろもんつき】
黒地の着物に五つ紋を付けたもので、第一礼装の着物として最も格が高いです。
→着物の「紋」についてはこちら
喪服としてのイメージが強いと思いますが、華やかな帯や小物と合わせて、結婚式や入学式・卒業式などハレの日にも着ることができます。
喪服として着る場合は、帯は黒一色の「黒喪帯」と長襦袢、半衿、足袋は白を合わせます。
黒留袖 【くろとめそで】
黒留袖は、既婚女性が着る最高格の着物で和装の第一礼装です。
結婚式や披露宴の際、仲人夫人や新新婦の母親、既婚の姉妹など新郎新婦に近い関係者が着用します。
上半身には柄がなく、裾に絵羽模様(全体が1枚の絵のように構成された模様)が入っていることが特徴で、生地は黒色で五つ紋を必ず入れます。
→着物の模様の意味についてはこちら
→着物の「紋」についてはこちら
帯は錦織か唐織の格調高い袋帯を、小物は金・銀・白の礼装用を、半衿、長襦袢、足袋は白を合わせるのがマナーです。
色留袖 【いろとめそで】
色留袖は既婚・未婚問わず着用できる格の高い着物で第一礼装です。
黒留袖と同じく下半身のみに絵羽模様が入っていることが特徴です。
→着物の模様の意味についてはこちら
五つ紋が入ったものは黒留袖と同格となります。
→着物の「紋」についてはこちら
紋の数によって格の高さが変わり、一つ紋や三つ紋では準礼装となり、パーティーやお茶会もOK。
五つ紋だと礼装になるためお食事会などカジュアルな場面にはふさわしくありません。
五つ紋で装う場合は、帯や小物は黒留袖に準じ、礼装用のものを合わせます。
振袖 【ふりそで】
未婚女性の第一礼装です。
ほかの着物に比べて袖が長いのが特徴です。
袖の長さで3種類に分類され、袖が短いほどカジュアルになります。
大振袖は結婚式のお色直しで着用されることが多く、中振袖は成人式の着用が多く、小振袖は卒業袴として着用することが多いです。
振袖には金糸や銀糸の入った豪華な袋帯を合わせるのが基本で、帯の結び方にルールはありません。
小物も華やかに刺繍の半衿や総絞りの帯揚げなどを合わせます。
→着物の模様の意味についてはこちら
訪問着 【ほうもんぎ】
振袖、留袖の次に格が高い着物です。
上半身にも柄が入っていて、胸、肩、袖、裾につながった絵羽模様が広がり、1枚の絵画のようになる華やかさがあります。
→着物の模様の意味についてはこちら
紋を入れると格が上がりすぎてしまうため、現在では一つ紋か、紋を入れないことが多いです。
→着物の「紋」についてはこちら
色無地 【いろむじ】
地紋のある、または地紋のない白生地を黒以外の一色で染めた着物です。
↓地紋の種類
紋の数や合わせる帯で格が変わり、一つ紋であれば準礼装、格のある袋帯を合わせれば、お呼ばれの結婚式にも着ていくことができます。
→着物の「紋」についてはこちら
紫や紺、茶などの色無地は祝儀・不祝儀どちらでも着ることができます。
喪服として着る場合は喪主・親せき以外のお通夜や偲ぶ会など。
結婚式から各種式典まで一枚あると幅広い場面で着まわせます。
付け下げ 【つけさげ】
訪問着よりも模様付けが控えめな着物です。
第二次世界大戦下に華やかな訪問着が禁止されたため、訪問着を簡略化した着物として考案されました。
絵羽模様ではないため、胸元~裾の模様はつながっていません。
→着物の模様の意味についてはこちら
袋帯と合わせれば格が上がり、洒落袋帯を合わせれば格を落とすことができ、使い道が広く、一枚あると重宝する着物です。
一般的には紋は入れませんが、入れる場合には陰紋や縫い紋の一つ紋がふさわしいです。
→着物の「紋」についてはこちら
江戸小紋 【えどこもん】
遠目では無地に見える極小模様の着物です。
もともとは虫の裃に用いられていましたが、江戸中期以降に町人や女性の着物として流行しました。
「鮫」「角通し」「行儀」は江戸小紋の柄の中でも格が高い柄として『江戸小紋三役』と呼ばれています。
鮫
角通し
行儀
格の高い柄の江戸小紋に紋を入れて、礼装用の帯を合わせれば、準礼装となり、披露宴などにも着ていくことができます。
小紋 【こもん】
反物全体に繰り返し模様を型染めした着物です。模様の大小は関係ありません。
柄も多彩で、可愛らしい柄の小紋に名古屋帯を合わせればカジュアルに、格の高い吉祥文様の小紋に同じく格調高い文様や織りの名古屋帯を合わせれば平服指定のお呼ばれの結婚披露宴などよそゆきにも装えます。
→着物の模様の意味についてはこちら
紬 【つむぎ】
織りの着物の代表格です。
もともとは出荷できないくず繭を使って織られた庶民の日常着でしたが、現在では作り手の減少により希少価値の高い着物となっています。
趣味性の高い着物で変わり結びや気軽な半幅帯にしても楽しめます。
御召 【おめし】
御召とは御召縮緬の略称で、徳川十一代将軍家斉が好んで召されたことから名づけられました。
ちりめんと同じく緯糸に強い撚りをかけて織るため、しぼという独特の風合いがあるのが特徴です。
ちりめんよりもシャリ感があり、紬より薄く軽い着心地で、織りの着物の中では最も高級とされています。
浴衣 【ゆかた】
もともとは湯上りなどに着るくつろぎ着だった浴衣。
現在では夏の遊び着として欠かせない装いとなっています。
生地が「綿紅梅」や「奥州紬」、「綿縮」などの上質な生地の“よそゆき浴衣”なら、名古屋帯を締めて白足袋を合わせれば、ホテルのレストランでの食事会にも着用できます。
→着物の模様の意味についてはこちら
2.着物の季節における種類
着物は着る季節によって、生地や仕立てが異なります。
四季を楽しむ文化の色濃い日本では、季節によって着物を着分けるのは楽しみでもあります。
半衿や帯揚げなどの小物も、素材によって着用する季節を変えましょう。
基本の着用季節
・10~5月は裏地をつけた「袷」
・6月と9月は裏地のない「単衣」
・7月と8月は透け感のある「薄物」
袷 【あわせ】
一年で最も長い期間使う、スタンダードな着物です。
透けない生地に胴裏と八掛の裏地をつけて仕立てたものです。
着物の表地と八掛の裏地のコントラストを楽しむことができます。
単衣 【ひとえ】
裏地をつけずに仕立てた着物で、盛夏の前後によそおいます。
袷と同じ素材か、絽ちりめんのようなさらりとした素材が使われます。
薄物 【うすもの】
絽や紗、麻といった透ける素材を使って、裏地をつけずに仕立てた盛夏の着物です。
長襦袢が透けて見え、見た目にも涼やかです。
帯や襦袢、半衿、帯揚げから草履まで夏用のものを選びます。
着物カレンダー
基本の着用季節
・10~5月は裏地をつけた「袷」
・6月と9月は裏地のない「単衣」
・7月と8月は透け感のある「薄物」
現在では5月から暑くなりはじめ、9月になっても残暑が厳しい日が続くことも多いです。
そのため、フォーマルな席以外であれば、その日の気候に合った着物を選び、我慢や無理をすることがないように、着物を楽しく着ましょう。
袷 | 単衣 | 薄物 | ||||
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1月 | 基本 | 実情 | ||||
2月 | ||||||
3月 | ||||||
4月 | ||||||
5月 | 実情 | |||||
6月 | 基本 | 実情 | ||||
7月 | 基本 | |||||
8月 | ||||||
9月 | 基本 | |||||
10月 | 基本 | 実情 | 実情 | |||
11月 | ||||||
12月 |
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