世間でよく聞く「茶道師範」。
でも調べてみても、「師範」という資格は存在しない…。
いったい「茶道師範」とはなにを指しているのでしょうか?
「師範」とはどういう意味?
まずは「師範」という言葉の意味をおさらいしましょう。
①人の手本となること。また、その人。模範。
精選版 日本国語大辞典
②学術、技芸を教える人。師匠。先生。またその資格にもいう。
つまり「師範」の意味は2種類あり、
1.他の人の手本となって、人に物事を教えることができる”人”のこと
2.その”資格”のこと
ということです。
なんとなく私の「師範」のイメージはひげを生やした老人だったので、年齢は関係ないのですね(笑)
茶道における「師範」
では茶道における「師範」だとどうでしょうか。
上記の意味から考えると「茶道師範」とは
1.大きな意味で、茶道を教えることができる人のこと
2.師範という資格を持った人のこと
ということになります。
茶道を教えることができる人
実は茶道を教えるためには資格や免許は必要ありません。
言ってしまえば、だれでもすぐに教えることができるということです。
ただし、茶道のどんな流派でも許状・免状制度があり、上位の点前を学ぶためには家元からゆるしをいただかなくては学ぶことができません。
この時にもらうゆるし状=許状・免状※です。
※流派によって許状・免状と名称が異なりますが、今回の記事ではまとめて許状と表記します。
家元からゆるしをもらうには教えている先生が許状を家元に申請する必要がありますが、
申請をするにも一定の許状が必要になります。
つまり、だれでも茶道を教えることはできますが、教えている人が一定の許状を取得していなければ、教わっている生徒が上位の点前を学ぶための許状を申請してあげられないということになります。
そう意味で、弟子の許状を申請できる許状を持っている人(=教授者)のことを「茶道師範」ということができそうです。
「師範」という資格を持った人
茶道にはたくさんの流派がありますが、流派によって許状の名称が異なります。
表千家・裏千家・武者小路千家の三千家では「師範」という許状はありませんが、以下の流派には「師範」という許状があるようです。
こちらの流派で茶道を学び、「師範」の許状・免状を取得すれば、名実ともに「師範」というわけですね。
「名誉師範」を授与された人
さらにもうひとつ、「茶道師範」と呼べる方がいます。
裏千家のことになりますが、
永年、裏千家茶道に修道してこられた方に家元から「名誉師範」の称号が授与されることがあります。
この「名誉師範」について裏千家の千宗室家元は
永年の真摯な修行に対して与えられる”名誉師範”は、良い先生の具体的な例の一つです。良い先生にゴールはありません。皆さん方を慕う大勢の社中のために、今まで以上に研鑚努力し、素晴らしい裏千家茶道人を導いていただきたい。
と語られています。
人の手本となる人ということで、まさに「茶道師範」と呼べる方ですね。
三千家の許状まとめ
表千家・裏千家・武者小路千家の3つの流派は、他の流派とは分けて「三千家」と呼びます。
理由はこの3つの流派は、千利休の孫である千宗旦の子どもたちがそれぞれ立ち上げた流派だからです。
↓詳しい流派については、こちらの記事の「武家茶道流派の系譜」に系譜をまとめています。
その三千家の許状をまとめてみました。
※この表は上から順に記載をしているだけであって、横並びの許状が同じお点前の内容というわけではありません。
表千家 | 裏千家 | 武者小路千家 | |
---|---|---|---|
免状 | 許状 | 資格証 | 許状 |
1.入門 | 1.入門 | 初級 三種目での一括申請が必須 | 1.的伝 |
2.習事 | 2.小習 | 2.小習Ⅰ | |
3.飾物 | 3.茶箱点 ※取得することで初級の資格が得られる | 3.小習Ⅱ | |
4.茶通箱 | 4.茶通箱 | 中級 分割申請も可。 | 4.小習Ⅲ |
5.唐物 | 5.唐物 | 5.唐物 | |
6.台天目 | 6.台天目 | 6.準教授 | |
7.盆天 | 7.盆点 | 7.茶通箱 | |
8.乱飾 ※男性のみ | 8.和巾点 ※取得することで中級の資格が得られる | 8.台天目 | |
9.真台子 ※家元のみ | 9.行之 行台子 | 上級(助講師) 和巾点から1年経過後。分割申請も可 | 9.盆点 |
10.大円草 | 10.教授 | ||
11.引次 ※取得することで上級(助講師)の資格が得られる。弟子の許状申請を行うことができる(教授者になれる) | 11.正教授 | ||
12.真之 行台子 | 講師 引次から1年経過後。分割申請も可 | 12.相伝 | |
13.大円真 | 13.皆伝 ※家元のみ | ||
14.正引次 ※取得することで講師の資格が得られる | |||
15.茶名・ 紋許 ※取得することで専任講師の資格が得られる | 専任講師 正引次から1年経過後 | ||
16.準教授 ※取得することで助教授の資格が得られる | 助教授 茶名から2年経過後。25歳以上 |
参考:表千家「表千家茶道 おもてなしの心」
裏千家:「裏千家ホームページ 修道のご案内」
武者小路千家:「ワゴコロ」
「茶道師範」といえば「トゥギザーしようぜ!」のあの方!
「トゥギャザーしようぜ!」
25歳以上の年齢の方でこのフレーズを言ったことがない方がいるでしょうか?
いませんよね⁉
若い方はもしかしたら聞いたことがないかもしれませんが、2000年頃、ルー大柴さんがCMで口にしたこのフレーズは瞬く間に大流行し、当時小学生だった私ももれなくどハマリし、なにかにつけて「トゥギャザーしようぜ!」と言っていました。
そんな、日本語と英語が混じった独特の話し方は”ルー語”と呼ばれ、大ブレイクしたルー大柴さん。
14年前から遠州流で茶道を始め、現在では茶道師範:大柴宗徹として文化の伝承に努めていらっしゃいます。
ティーのグレートマスター、”サウザンド利休”が確立した「茶の湯」についてルーさんは
ひとつひとつの動作に意味がある。親が子どもに教えるべきことが茶道にはたくさん詰まっているんです。
茶道では、すべての所作の根底に「相手を思いやる精神」があり、他人の気持ちを慮る姿勢や、ものを大切にする心が養われる。それが子どもに習わせるべき理由だと語っていらっしゃいます。
茶道を実際に学んでいる身とすると、ルー大柴さんがおっしゃるように、茶道のいたるところに「思いやりの精神」を感じますよね。
昔、テレビで見ていたルー大柴さんとは印象がガラッと変わりましたが、同じ茶道をやっているということで少しだけ親近感を感じました。
こんな人も!茶道をやっている芸能人
遠い存在の芸能人でも、同じ茶道を趣味にしていると知ると少し親近感が湧いたり、より好きになったりしますよね。
そこで茶道を趣味にしていると情報がある芸能人を調べてみました。
◆お笑い芸人:オリエンタルラジオ中田敦彦さん
糸井重里さんと対談した際に、仕事にかかわりのない趣味を持ったら?と勧められ、山田五郎さんと対談した際に茶道を勧められたようです。
また中学生の時には幽霊部員でしたが、茶道部に所属していたようです。
Youtubeチャンネル:中田敦彦のトーク
◆女優:田中麗奈さん
20代前半の時、中国の方とお仕事をする機会が多い中で、中国では芸能学校で自分たちの国の文化や芸事を習うということを知ったそう。そこで田中さんは自分は胸を張って「日本の俳優です」と言えるのか…と感じ、日本に帰って茶道を始めたそうです。
参考:haconiwa
◆フリーアナウンサー:中野美奈子さん
2009年には自身で茶の湯のワークショップを開店して、全国から1000人弱の生徒を集め盛況だったそうです。
◆女優:戸田恵子さん
小学校から中学まで茶道と華道を習っていたようです。
◆女優:田丸麻紀さん
テンションを上げたいときや元気がない時に茶道教室に行かれるようです。
頭と心の整理にもってこいだそうです。
◆女優:有村架純さん
女優という仕事を始める前から興味があり、仕事柄時代劇をやることもあるので、所作を学びたいと思い、始めたとのこと。「茶道が持つ力は芝居にも通じるところがたくさんあるので始めてよかった」と話しています。
参考:マイナビニュース
まとめ
・「師範」という言葉の意味は
①お手本になる人のこと
②資格そのもののこと
・茶道における「師範」とは
①弟子の許状を申請できる教授者のこと
②遠州流、松尾流、江戸千家などで「師範」の許状をもっている人のこと
③「名誉師範」の称号を授与された人のこと
の3種類の人のことを「茶道師範」ということができる
・「トゥギャザーしようぜ!」で有名なルー大柴さんは、遠州流の師範として文化の伝承に努めている
・茶道を趣味にしている芸能人は
オリラジ中田敦彦さん、田中麗奈さん、中野美奈子さん、戸田恵子さん、田丸麻紀さん、有村架純さんなど
この記事が参考になれば幸いです。
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